健康一口メモ
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結核非常事態宣言

1999年7月26日、厚生省は異例の結核緊急事態宣言を出しました。新聞やテレビでこのことを知った患者さんの関心が非常に高いので、なぜこのようなことになったか、「結核」の現状、背景をお話することに致します。
結核の移り変わり  結核は過去の病気ではありません
*新しい結核発病患者が増加しています:明治以来、日本は結核に悩まされ続け、特に若い人がたくさん死に、「国民病」と呼ばれました。それが戦後、抗結核薬、生活の向上、対策の強化により、昭和25年をピークに患者さんが激減を続け、結核は恐い病気でなくなり、過去の病気と思われるようになりました。ところが、最近、患者発生が横ばいから、平成9年には38年ぶりに増加に転じました。平成9年に新しく結核にかかった患者は、42000人、人口10万人対33.9人です。これは全国平均で、3000人に1人の発生ですが、60歳以上の男性では実に800人に1人が発病しており、結核は決して稀な病気ではなくなったのです。
*結核の集団感染が増えています:結核への関心がうすれ、情報の不足から受診が遅れ、診断、対策の遅れもあって、学校(中・高・大学)、病院、老人施設、デパートなどでの集団感染が続発しています。その背景には、結核菌に感染している(既感染)高齢者と、それより若い未感染の世代との二極化があります。結核が国民病と言われた時代には、ほとんどの人が自然感染しました。その人たちが年をとって免疫力が弱まり、胸の中で長い間眠っていた結核菌が目をさまし活動(発病)を始めるのです。一方、現在の中年以下の人は、結核に出会ったことがない(従って結核に免疫がない)人が大多数です。こういう人が感染するとそのうちの何人かが発病することになります。これが集団感染の構図です。高齢者で免疫力が低下するのは年齢からばかりではなく、糖尿病、腎不全、手術後、栄養不良、ストレスなどたくさんの要因があります。このため、高齢者の結核患者がとても増加しました。
その他の課題
*日本の結核の状況は先進国中最悪:もともと日本の患者数は先進国の中では5倍も多いのです。アメリカにくらべて40年も遅れていると言われます。しかも、結核は今、人類史上最悪の流行をみせています。すでにWHO(世界保健機構)は1993年に「結核非常事態宣言」を出しています。
*国民、医療、行政の結核に対する認識の低下、結核専門家の不足
*薬の効かない多剤耐性結核の出現
以上のような問題があります。1人1人が結核に対する認識を新たにしましょう。
ワンポイントアドバイス
結核はあなたの身近に迫っています。咳が2週間以上続くようであれば、かぜだと思いこまないで、医者にかかってください。

東雲堂だよりから 東雲堂医院 鈴木孝雄