健康一口メモ

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小児科医の説明と保護者の理解

こんなニュースが目に入りました。
国立公衆衛生院調査 小児科医の説明と保護者の理解に差

 子どもの病気に関して小児科医が行った説明について、保護者の7割近くが説明を理解できなかった経験を持つことが、国立公衆衛生院の田中哲郎母子保健学部長らの調査によりわかった。調査は、福岡県、東京都、千葉県の保育所に通う子どもの保護者760人と全国の小児科医731人を対象に行ったもの。
 これによると、子どもの病気に関する医師の説明について、「理解できなかった経験がたびたびあった」と答えた保護者は9.8%、「時にあった」は57.4%となっており、合わせて7割近くの保護者が説明を理解できなかった経験を持っていた。また、小児科医側も、説明を理解していないのではないかと感じることが「よくある」のは16.3%、「時々ある」が63.2%となっており、医師、保護者双方の意志疎通がうまくいっていない実態がうかがえた。

(「日本公衆衛生雑誌」平成12年10月号より)

 これだけでは、どのような疾患または病状についての説明だったのかとか、小児科医の年齢、経験年数などが分かりません(保護者は一応保育所に通う子どもを持つということである程度の年齢集団であることは推定できますが、上や下にも子どもがいるのかなどは分かりません)。大変不十分な記事内容ではあるのですが、患者さんとのコミュニケーションの難しさは日々実感しているところでありますので、興味を引かれました。
 私の感想を少々述べてみます。
 まず、小児科疾患は先天性の障害など特殊な疾患を除けば、日常診療の場においては比較的病状説明あるいは疾患そのものの説明がしやすいものが多いと思います。それにもかかわらず、7割近くの保護者が説明を理解できなかった経験を持っていたというわけです。これに対して小児科医側が感じている数字を見ると、説明を理解していないのではないかと感じることが「よくある」のは16.3%、「時々ある」が63.2%となっており、「よくある」も「時々ある」のどちらも保護者の数字よりも高くなっています。特に「よくある」の方は、保護者が感じている数字の倍近くもあります。説明している医師の方が話がよく伝わっていないと感じているわけです。
 これは何処に原因があるのでしょうか? 一般の方々が医学用語を聞き慣れていないということも原因だと思いますが、医師の方にも疾患や病状を説明する言葉を持たないということが大きな要因であると思われます。つまりお互いが共通の言語を持っていないのですから意志の疎通などが図れるはずがありません。
 最近になって、医師の側でも「メディカル・インタビューマニュアル」や「外来における患者さんへの説明」などという本が発売になるようになりましたが、それまでは患者さんの方も医師の方もお互いにコミュニケーションの大切さを実感していなかったのではないでしょうか。患者さんの方は全面的に医師に任せる、医師は患者は余計なことを知らなくてもいいから俺に任せておけという医療が続いていました。勿論このままでいいわけはありません。ではどうしたらいいのでしょうか?
 医師が分かりやすい言葉で、できるだけ理解を得られるような話し方を身につけることも勿論大事なことではありますが、患者さんの方でも身体の知識や基礎的な病気の概念(病気の特徴や一般的な経過など)についての知識を持たなければならないのではないかと思います。そのためには学校における保健教育の充実と、ある程度の患者教育が必要になるのではないでしょうか。患者教育などというと何を偉そうにと思われるかもしれません。医者教育こそが必要だといわれるかもしれません。しかし、今の医療は特殊な場合を除けば、医師が患者さんを見つけてくるのではなく、患者さんが医療機関を受診することから始まります。患者さんが身体の知識や基礎的な病気の概念を身につけて病状を訴えることは決して医師のためだけではなくて、患者さん自身や子どもさんの身を守るために大切で有用なものであると思うのです。
 多くの医師は患者さんが思っている以上に、患者さん達とのコミュニケーションを得たいと望んでいると思います。