医学まめ知識
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高血圧症の自覚症状および合併症

T高血圧症の自覚症状

健康診断やあるいは何らかの理由で病院に行き医師の診察を受けた時に高血圧であるといわれるまでは、本人は血圧が高いということには気付いていないことが多く、本人は無症状のことが多いものです。
  1. 頭痛:高血圧の初期の患者さんで頭痛を訴える方が多くみられます。患者さんは後頭部痛あるいはもう少し漠然とした後頭部が重いというような表現をされます。このように、それほど特徴的でない頭痛を訴える方は自分が高血圧であることを知っている場合が多いものです。同じレベルの高血圧でも、自分が高血圧であることを知らない場合には頭痛を訴える頻度は低いといわれています。そして自分が高血圧であることを知っている患者さんの頭痛の多くは高血圧に対する不安による心因性のものと思われます。
    重症あるいは悪性高血圧になると、頭蓋内圧が高くなるために早朝時の後頭部あるいは前額部の頭痛(日中はやわらぐ)としばしば嘔気を訴えることがあります。褐色細胞腫の患者さんや動揺性(血圧の上がり下がりが激しい)高血圧の患者さんでは、著しく血圧が上昇する時に血管性あるいは緊張性の頭痛を訴えることがあります。
  2. 鼻出血、耳鳴り、めまい:高血圧患者さんの中に鼻出血や耳鳴り、めまいを訴える方もおりますがその割合は決して多くありません。

U.高血圧による合併症

高血圧の適切な治療を行わず放置しておくと、やがていろいろな合併症をひきおこしてしまいます。合併症をひきおこしてしまいますとそれぞれの合併症による自・他覚症状が出現するようになります。
最初に述べたように最初のうちは高血圧に特有の症状は見られませんので、自分が高血圧であることを知らない方が大勢いらっしゃいます。国や市町村が定期健康診断に力を入れているのは、早い段階での病気を見つけて早く治療を受けてもらうことが目的ですが勿論高血圧もその中に含まれています。
表1
標的臓器
0
合併症
高血圧性
動脈硬化性
脳内出血
高血圧性脳症
脳梗塞
一過性脳虚血発作
眼底
うっ血乳頭
網膜静脈血栓症
心臓
高血圧性心疾患
(左室肥大)
(うっ血性心不全)
狭心症
心筋梗塞
腎臓
0
腎硬化症
血管
解離性動脈瘤
大動脈瘤
動脈硬化性閉塞症



高血圧治療の目的は単に血圧をコントロールする、下げるだけでなく(勿論血圧のコントロールは重要ですが)合併症をおこさないようにするのが最終的な目的なのです。高血圧の結果、障害される器官はの5つです。通常、高血圧によって直接おこってくるものと、高血圧により促進される動脈硬化によってもたらされるものとの2つに区別されます(表1)。一般に、高血圧そのものに基づく合併症は、血圧を下げる治療によって効果が期待できますが、動脈硬化性変化に基づく合併症は、降圧治療による効果はあまり期待できません。


以下に主な合併症を挙げて説明します。

1.脳血管障害

  1. 脳内出血高血圧が直接関与する脳血管障害です。症状は病巣や重症度、病期(病気の進んでいる段階)などによって様々な神経症状がみられます。主なものとして意識障害、片麻痺、知覚障害、言語障害などがあります。
  2. 高血圧性脳症脳循環には血圧が少々変動しても一定の血液が流れるように調節する働きがあります。この調節できる範囲を超えて血圧が上昇すると脳血管は局所的な収縮と拡張を繰り返す状態になります。血管が拡張した部分では血管の透過性が亢進(血管の中の水分などが外へ漏れやすくなる)し脳浮腫(むくみ)が起こってきます。脳浮腫は局所の神経症上のほかに、頭痛、嘔気、嘔吐、痙攣発作、錯乱状態などの意識障害を起こします。これらの症状は血圧を下降させることにより速やかに改善されます。
  3. 脳梗塞出血ではなく脳の血管が詰まって血液の流れが悪くなる状態で、脳内血管の動脈硬化によって引き起こされることが多い疾患です。症状は脳内出血とほぼ同じです。
  4. 一過性脳虚血発作(TIA)一過性(一時的)に脳血管が詰まった状態となることを指します。症状は局所の神経症状(めまいやシビレ、頭痛など)ですが、発作は急激(5分以内、通常1分以内)で進行性ではなく(症状が段々ひどくなるようなことはない)、回復も長くて1〜2分と速く、後遺症も残さずに回復します。何回も繰り返すような場合は脳血栓の前触れと考えられる時もあります。

2.高血圧性心疾患

  1. 左室肥大・うっ血性心不全血圧が高いということはそれだけ心臓に負担がかかっているということです。高血圧によって左室肥大がおこってきます。いわゆる心臓が大きくなってくるといった状態です。医師から心臓がかなり大きくなっていますねと説明されて丈夫で良かったとおっしゃった患者さんがおりましたが、当然、高血圧などのために心臓が大きくなるのは良くないことです。さらに病変が進行するとうっ血性心不全へと進行します。これは心臓のポンプ作用が充分働けなくなった状態で肺にも水が貯まり呼吸も苦しくなってしまいます。
  2. 狭心症・心筋梗塞:心臓の筋肉に酸素や栄養を支給している動脈(冠動脈といいます)が動脈硬化による血液循環の障害によっておきる疾患です。高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満、などが危険因子です。血管が完全に閉塞されて血液が流れなくなると心筋梗塞と呼ばれます。症状は共に主として胸痛、胸内苦悶感であります

3.腎硬化症:高血圧に合併する腎障害は腎血管床の障害による腎硬化症です。腎硬化症は良性腎硬化症と悪性腎硬化症とに分けられます。良性腎硬化症が何らかの原因で著しく病変が進行したものが悪性腎硬化症です。本態性高血圧患者さんの大多数は腎病変がゆっくりと進行し、悪性腎硬化症となるのはごく一部の患者さんです。良性腎硬化症の自他覚症状は、夜間頻尿と軽度の蛋白尿です。

4.大血管病変

  1. 解離性動脈瘤:石原裕次郎が手術を受けたことで知られるの病気です。動脈が裂ける恐ろしい病気です。患者さんの多くは高血圧を有しています。
  2. 大動脈瘤:高血圧は動脈硬化の進行を促進し大動脈瘤を作ることがあります。

5.眼底病変

  1. 網膜静脈血栓症:による視力障害があらわれる。
  2. うっ血乳頭:脳圧亢進によって眼底の視神経乳頭と呼ばれるところが発赤、浮腫、突出、静脈怒張、出血や白斑を呈する状態をいいます。放置していると視神経の萎縮をおこしてしまいます。頭痛、嘔吐と並んで脳圧亢進の3徴候の一つに数えられています。

医学豆知識から 岩本憲夫