医学まめ知識

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血圧の高低を決める因子

血圧は体の状態・時間・季節などによっていろいろと変動します。ではどんなものが血圧を上げたり下げたりするのに関係しているのでしょうか。主に次の5つの因子によって血圧の高低が決まります。

.心臓の拍出量:心臓が1回の拍出(収縮)で体に送り出す血液の量です。心臓弁膜症などでは血液が逆流したりして拍出量が増えることがあります。心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしていますからいつもの量よりも多い量を送り出すためにはいつもよりも強い力(血圧)が必要となって血圧が高くなるわけです。

.抹消細動脈の抵抗:体の抹消(手足の先の方)の細い動脈が硬くなっていたり普段より更に細くなったりすると血圧は高くなります。先の方まで血液を送るのに、ある程度の太い血管を通して送るのと、細く硬くなっている血管を通して送るのでは後の方が力が欲しいわけです。では、どんな時に抹消の細動脈は細くなるのでしょうか。夏よりも冬の方が血圧が高いと言われますね。寒い時には熱の放出を防ぐために血管が収縮して細くなるからです。また、煙草を喫うとニコチンの作用で一時的ですがやはり血管が細くなって血液の流れが悪くなることが分かっています。このほかストレスなどで緊張しても同じ様に血管が細くなります。

.循環血液量: 体の中を流れている血液の量です。水分の量が影響します。腎臓の病気などで塩分(ナトリウム)の排泄が悪くなって血液中に塩分が増えると塩分は水を周りに引きつける力が強いので結果的に血液中の水分の量も増えます。適量よりも多い液体を循環させるためにはより大きな力が必要となり血圧が高くなるのです。腎臓が悪くなくても塩分を摂り過ぎていれば同じわけです。健康のために塩分の接種を少なくして下さいというのはこんな理由があるからなのです。ちなみに糖尿病の患者さんも糖尿病を持っていない人に比べると高血圧になる割合が多いのですが、その理由の一つとして糖分も塩分と同じ様に水分を引きつけますので血液の中の水分の量が増える、つまり循環血液量が多いからということがあります。

.血液の粘稠度:血液の粘っこさです。高脂血症などで血液が油濃くなることがあります。極端な例を出すとさらさらした液体とどろどろした液体とを循環させるのにどちらがより力が必要かはお分かりになりますね。血液の粘稠度には血小板の凝固作用が関係してきます。そこで血小板の凝固作用を弱める薬を処方することもあります。食事では青魚に含まれているエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸は悪玉コレステロール(LDL−コレステロール)を減少させると共にある程度血液の粘稠度を低下させることが分かっており注目を集めています。

.大動脈の弾力:抹消細動脈の抵抗も血圧に多いに関係がありましたが、大動脈の弾力性も血圧の高低に影響を及ぼします。弾力に富んだしなやかな血管と弾力に乏しい鉛管のような血管とでは血液を遠くまで送るのには相当の差ができてしまいます。若いしなやかな血管は血管そのものの弾力によって少ない力(血圧)でも遠く抹消まで血液を運ぶことができます。しかし次第に年を取ってきて硬くなってきた血管ではそうはいきません。大きな圧力(血圧)をかけてやらないとなかなか抹消まで血液を運ぶことができません。高齢の患者さんの中には220/70mmHgなどと収縮期の血圧だけが極端に高くなっている方がおられます。このような場合は大動脈の弾力が無くなったためであることが多いのです。

さて血圧の高低を決めるのはどんな因子によるものかが理解できれば高血圧症にならないためにはどうしたら良いかが分かってくると思います。
こうしていろいろな注意点を並べると如何にも面倒くさいものと思われるかもしれませんがそうではありません。
「言うは易く行うは難し」ですが、単に高血圧症の予防というに止まらず人生そのものを大事にするために必要なことであると思います。時々で結構ですのでこれらのことを思い浮かべていただければ嬉しく思います。

 

医学まめ知識から 岩本憲夫