医学まめ知識

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 病は気から(その4 心身医学が扱う病気)


人間の病気を心身一如の広い立場からみた場合、心の影響を受けない病気は一つもない。その意味では、すべての病気が心身症だということになりそうです。「トムの実験」を行ったウォルフ教授なども「心身症ということばをつくること自体おかしい。すべての病気に心身医学は適用されるべきである」と述べられています。実際、がんなどの患者さんにおいても、その人の持っている人生観、宗教的な信念、医者や看護人たちの患者さんにたいする心理的な取扱いなどが経過に大きく作用することは、最近はよく知られているところとなってきています。
しかし、治療という立場からは、やたらに間口を広げてなんでもかでもこれで治せるというものではありません。各心療内科によっても異なりますが、取り扱う疾患の目安は一応の以下のようなものであります。
「体の症状がはっきりしていて、今までの医学的な治療と併用して、あるいはそれ単独で、積極的に心理的な治療を行う意味が十分にあるか、あるいはどうしてもそれが必要であり、また実際にそれが可能な場合に限って、心身医学的な治療の対象となる症例となる」

それでは、心身医学的な治療、いいかえれば心療内科の対象としての病気にはどのようなものがあるでしょうか。現在、殆どの心療内科では心身症を始めとして、心身両面からの治療を必要とする内科的疾患を取り扱っており、原則としてノイローゼ(神経症)の治療は行っていないところが多くなっているようです。

心身症
T:皮膚:神経性皮膚炎、掻痒症、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多汗症 など
U:筋肉骨系統:心因性の関節リュウマチ、背痛、筋肉痙攣、筋肉痛(緊張性頭痛)など
V:呼吸器:気管支喘息、空気飢餓(空気が足りないような息苦しさ)、過換気症候群(呼吸が過度に早く深くなって、顔や手足がしびれたり痙攣したりする)、しゃっくり など
W:心臓血管系:狭心症、発作性瀕脈(発作的に脈が速くなる)、不整脈、高血圧、偏頭痛 など
X:胃腸系:呑気症(やたらに空気を呑み込む)、胃・十二指腸潰瘍、胸やけ、過敏性腸症候群(腸には特に病変がないのに慢性的に便秘や下痢をきたす)
Y:泌尿、生殖器:月経障害、不感症、冷感症、陰萎(心因性インポテンツ)、婦人自立神経症、排尿障害、頻尿 など
Z:内分泌系:糖尿病、バセドー病 など
[:五感をつかさどる器官:感情が強く関係する眼、耳、鼻、舌などの疾患


これらは代表的なものだけで、このほかにも心身症としての可能性を持つ疾患は多くあります。最近では台所症候群、空の巣症候群、燃え尽き症候群など今まではなかった病名も付けられるようになってきました。
しかし、ここで注意していただきたいのは、上にかかげたような病名を持つすべてのものが、心身症であると早合点してはいけないということです。例えば気管支喘息の中には、純粋にアレルギー性に起こり、心理的な治療は殆ど意味のない症例も多いからです。ただ、これらの病気にかかっている人の中には、心身症としての取扱いを要する例がしばしばあるという意味ですので、これらの病名が即、心身症であるというわけではありません。

医学まめ知識から 岩本憲夫